解離性障害とは
解離性障害とは、強いストレスなどによって、意識や記憶、思考、知覚、行動、身体イメージなどに関する感覚をまとめる能力が一時的に失われた状態です。通常、幼児などでは自分を守る反応として空想上の友達を作りだしたり、話しかけたりといったことが起こりますが、成長しても続いたり、成人になってから起こったりすると、解離性障害の可能性があります。解離性障害は、フラッシュバックや自分の身体から抜け出して離れたところから自分を見ている感覚(体外離脱体験)を起こしたりと、日常生活に支障をきたすことがあるため、適切な治療が必要です。
身体表現性障害と解離性障害の関係
身体表現性障害と、解離性障害はどちらも精神的なストレスや外傷などが原因となり、身体症状が現れる病気で、どちらも機能性神経症状として分類されています。どちらの病気も、検査を行っても消化器や甲状腺、副腎などに原因が見つからず、検査では神経が障害されていることが確認されないのにもかかわらず、動悸やふるえ、息切れ、発汗などの神経症状が起こるという特徴があります。身体表現性障害では、日常生活におけるストレスがきっかけとなり、急に歩けなくなったり、手が上がらなくなる、声が出なくなるなどの運動症状と、吐き気、下痢、便秘などの消化器症状を起こします。
身体表現性障害の治療法
身体表現性障害には、確立した治療法はないため、症状に応じた薬物療法を行いながら、心理療法を行っていきます。まずは、身体表現性障害は、内臓などの病気ではなく、脳や神経の機能異常によってもたらされている病気であることを理解することが重要です。治療に際しては、家庭環境や職場環境などの調整が必要になるため、患者様とよく話し合って、必要であれば職場の担当者や家族を交えた面談なども行います。薬物療法に関しては、抗不安薬や抗うつ薬、睡眠薬などを用います。
解離性障害の原因
解離性障害の原因やメカニズムは、明らかになっていませんが、様々な出来事によるトラウマや強いストレスが関係していると考えられています。また、幼少期のつらい体験がもとになって発症している場合も多くみられます。体質も関係すると考えられています。
解離性障害の症状や種類
解離性障害の症状は、解離性健忘、解離性とん走、解離性同一性障害、離人症性障害、解離性昏迷の5つの大きな分類があり、それぞれの症状に応じて、治療法が異なります。
解離性健忘
解離性健忘とは、犯罪被害などの強いストレスを受けたことで、自身に起こったことについての記憶を忘れてしまう状態です。忘れている記憶は、数日で戻る場合も、数十年など長期にわたって戻らない場合があります。
解離性とん走
解離性とん走とは、突然自分に関する自己同一性(アイデンティティ)を失い、今いる場所から失踪してしまうことです。数日で同一性が戻り、元の場所に戻ってくる場合もあれば、時には遠く離れた場所で、別人として新たな生活を始めていたりする場合もあります。同一性が元に戻ってきた場合は、とん走中の記憶は失われます。
解離性同一性障害
解離性同一性障害とは、かつては多重人格障害として呼ばれていた神経症で、1人の人間の中に2人以上の人格が存在している状態です。何らかのきっかけで、別の人格が出現すると、本来の人格は他の人格に支配されてしまいます。
離人症性障害
離人症性障害とは、身体または精神から自分が切り離されたような感覚が生じる状態です。たとえば自分が話していることが、まるで他者が話していることのように聞こえたり、自分を外から観察しているように、もう一人の自分が、自分が話をしているのを見ているような感覚が生じます。
解離性昏迷
解離性昏迷とは、意識はあるのに突然自らの意思で体を動かしたり、話すことができなくなる状態のことです。一般的に、短時間のうちに元の状態に戻りますが、その間、本人は自己同一性が失われており、声をかけても反応がないなど昏迷しています。
解離性障害の治療
解離性障害の治療は、心理療法と薬物療法を組み合わせて行っていきます。当院では、心理療法として認知行動療法を行っています。
不思議の国のアリス症候群、
離人症とは
不思議の国のアリス症候群
不思議の国のアリス症候群とは、周りの物が突然大きく見えたり、小さく見えたり、歪んで見えたりなど、物の大きさや自分の大きさが通常とは異なって感じられたり、色が異なって見えたりなど、物が現実とは異なるように見える状態です。小児期に一過性に起こることが多いです。成人では、片頭痛が合併する場合が多いです。またこうした症状は、てんかんや統合失調症、ウイルス脳炎やうつ病の初期症状、向精神薬の副作用でも起こることが報告されています。不思議の国のアリス症候群の治療は、原因疾患の治療や、心理療法です。治療の際には、原因疾患の有無の確認と、眼球の異常がないかを確認する必要があります。なお、てんかんや片頭痛が無いのにもかかわらず、不思議の国のアリス症候群が見られる場合は、重度の離人症であることが疑われます。
離人症
離人症とは、自分が自分であると感じられなくなる状態で、世界が現実のものであると感じられなくなったり、自分の写真などを見ても、それが自分であると感じられなくなったりします。このような感覚が繰り返し起こったり、持続するため、強い違和感を起こします。有病率は人口の2%程度であるとされており、平均発症年齢は16歳であり、思春期までに生じることがほとんどです。離人感や現実喪失感は、単独で生じることが少なく、うつ病や不安障害、統合失調症などの精神疾患の1つの症状として起こることが多いです。そのため治療は、他の精神症状との関係性を考えながら行います。