ストレス障害(急性ストレス障害・PTSD)

ストレスとは

ストレスとはストレスとは、外部からの刺激によって身体の内部に生じる反応のことで、日常生活で感じる暑さや寒さ、雨、日射などの物理的刺激や、公害や薬害などの科学的刺激、対人関係や仕事、家庭環境などの心理的刺激などあらゆるものがストレスの原因(ストレッサー)になります。ストレスは誰にも普通に存在するものですが、ストレスにうまく適応できずに、心や身体、行動に影響が出てしまうと、それはストレス性の病気となります。ストレス性の病気には、症状を抑えるために薬物療法を行いながら、ストレッサーにうまく適応できるように心理療法を行って改善を図っていきます。ストレス性の病気は、本人が病気を理解するとともに、周囲の人たちにも理解してもらうことが重要です。

ストレス障害とは

ストレス障害とは、普通のストレスの対処の仕方では適応できないほどの大きなストレスを抱えたときに、そのストレスが持続することによって、日常生活に様々な支障が起こる状態です。

急性ストレス障害

急性ストレス障害とは、交通事故や爆発事故、犯罪被害などの生死や人の尊厳にかかわるような出来事を経験し、強い精神的ストレスがかかった際に、一時的に心身の症状が現れる一過性の障害です。症状は、体験したつらい出来事の記憶が突然鮮明によみがえってくるフラッシュバックや悪夢、過覚醒、つらい出来事に関することを避けようとすることなどが多いです。症状が現れるのは、ストレスに遭ってから4週間以内で、症状も4週間以内に自然治癒する特徴があります。この急性期に、適切に対応せずに放置してしまったり、誤った治療を行ってしまうことで、症状がより長期にわたって持続するPTSD(心的外傷後ストレス障害)に移行するリスクがあります。大きなストレスを受けた後、上記のような症状が現れた場合は、できるだけ早く受診してください。

急性ストレス障害の原因

急性ストレス障害の原因は、交通事故や犯罪被害、自然災害、戦争被害など、命の危険を感じるような大きな精神的なストレスです。また、激しいストレスとなるのは、本人が直接被害を経験した場合だけでなく、そうした出来事を目撃したときも含まれます。

パワハラ(パワーハラスメント)

パワーハラスメントとは、職場においての地位や人間関係の優位性を用いて、精神的、身体的苦痛を与える行為です。近年、パワーハラスメントを受けて、急性ストレス障害を発症する例が多く報告されています。急性ストレス障害は適切な支援を受けなければ、PTSD(心的外傷後ストレス障害)に移行することがあるため、初期のうちに産業医や精神科医に相談することが重要です。 当院の医師も精神科医、産業医の資格がございますので、安心してご相談ください。

カスタマーハラスメント

カスタマーハラスメントとは、顧客による暴行や脅迫、暴言、不当な要求などの度を超えた迷惑行為のことで、急性ストレス障害の原因になることがあります。企業はカスタマーハラスメントに該当する可能性があると報告があった際には、従業員に健康被害が及ばないように、適切に対処する必要があります。また、特に顧客と直接やり取りをする部署においては、担当者のストレス状態の把握や、産業医の診療への誘導などのダメージケアを行うことも重要です。

急性ストレス障害の症状

精神症状

不安、緊張、集中力低下などが継続します。

身体症状

頭痛、めまい、不眠、動悸、筋肉が凝り固まりやすくなることで首や肩の痛みといった身体的症状が続く

解離症状

原因となった体験や場面が思い出せない、離人症などの症状が起きる

フラッシュバック(追記億)

トラウマの元となる場面やその時の感情を何度も繰り返し突然思い出してしまう。

急性ストレス障害の治療

急性ストレス障害の治療では、一時的な症状を抑える薬物療法と、トラウマに対する心理療法を行います。急性ストレス障害はPTSD(心的外傷後ストレス障害)と近い症状があり、PTSDに移行するリスクもあるため、適切な治療を行うことが重要です。

PTSD(心的外傷後ストレス障害)

PTSDとは、暴力や性的暴行、交通事故、犯罪被害、戦争、天災などの日常的に許容できる範囲を超えた強いストレスを受け、それがトラウマ(心的外傷)になって発症します。症状は、フラッシュバックや悪夢、不眠、不安や緊張などです。PTSDは、急性ストレス障害とは異なり、症状が長期間続きます。

PTSD(心的外傷後ストレス障害)と急性ストレス障害

激しいストレスに遭遇したあと、4週間以内に症状が現れ、4週間以内で治まるものを急性ストレス障害と診断し、症状の発症までの期間に関わらず症状が1ヵ月以上続くものをPTSDと診断します。急性ストレス障害とPTSDの症状は共通していて、どちらも心的外傷およびストレス因関連障害群として同じ分野に属する精神疾患です。

PTSD(心的外傷後ストレス障害)の原因

PTSDの原因は、暴力や虐待、性的暴行、ハラスメント、交通事故、犯罪被害、戦争、天災などの許容できる範囲を超える大きな感情の揺れ動きです。自身が直接被害を受けた場合にとどまらず、被害を目撃してしまった場合にも起こります。また、体質や気質、遺伝、生活環境なども発症に関係するとされています。

PTSD(心的外傷後ストレス障害)の症状

フラッシュバック(追記億)

フラッシュバックとは、トラウマのもととなるつらい出来事の記憶が、突然鮮明によみがえってくる現象です。とくに交通事故によるPTSDの場合は、事故体験をまさに繰り返しているような感覚や繰り返しているような悪夢をみることもあります。フラッシュバックは、トラウマとなる出来事を本人はすっかり忘れているつもりでも、何かをきっかけに、記憶が蘇ってきて、それにとらわれてしまいます。フラッシュバックは、周りの人から見ると、突然情緒が不安定となり取り乱すため、理解されにくいことがあります。

回避

フラッシュバックを繰り返しているうちに、フラッシュバックを起こすきっかけをなんとなく体得してしまい、そのきっかけとなる状況を、避けるようになります。そのため、だんだんと行動範囲が狭くなっていき、自宅から出ることができなくなってしまったりもします。

過覚醒

過覚醒とは、交感神経が常に高ぶっている状態で、いつもピリピリ、イライラしたり、ちょっとした刺激にも驚いたり、警戒心で心がはりつめてしまいます。そのため、ぐっすりと眠ることが出来なくなります。過覚醒は、トラウマによる激しい感情の高まりから、気持ちがだんだんと落ち着いていく過程の中で起こります。

その他の症状

つらい経験をすると、自然に感覚や感情をマヒさせて、つらい感情をやり過ごそうとすることがあります。この状態は、激しい精神的ショックから立ち直っていくための過程に起こる自然な反応です。しかし、この状態が長く続き、なかなか抜け出せない様子があれば、PTSDに移行している可能性があるため早めに受診してください。

PTSD(心的外傷後ストレス障害)の治療

PTSDの治療では、急性ストレス障害の治療と同様に、まずは症状を和らげる薬物療法を行います。症状が落ち着いたら心理療法を行うこともあります。